(※2025年9月3日投稿)
こんにちは、中小企業診断士の辻本昂大です。
今回は、簿記3級、簿記2級を保有し、今は会計系の職に就いている筆者が
中小企業診断士試験財務会計で簿記2級は必要なのか?という疑問について、みなさんの状況別に詳しく解説していきます。
財務会計は、考え方が独特で、年々難易度が上がってきており
「会計の考え方が難しい…」
「問題が解けなくて、足切りになりそうで不安…」
という方は多いと思います。
その対策としてよく議論になるのが
「簿記2級は財務会計が有利になるのか?」
「財務会計のために簿記2級取得するのは労力に見合うのか?」
ということです。
結論から言うと、簿記2級は財務会計に必須級になってきている。
となります。
(ちなみに、中小企業診断士の実務として簿記2級レベルの知識は必須と言ってもいいです。)
ですので、私は簿記2級の取得を強く勧めています。
本記事では、
- 中小企業診断士と簿記2級の関連性
- 資格を取得済みの人、未取得の人の財務会計対策
- 時間の余裕がある人、無い人の簿記2級の必要性
について紹介しています。是非読んでみてください。
中小企業診断士と簿記2級の関連性

- 中小企業診断士試験の財務会計はコンサルタントとして財務全般を支援するための知識が問われます。
- 簿記2級は経理担当として、仕訳や各種レポートの作成方法を問われます。
この2点を前提に関係性を説明します。
中小企業診断士と簿記2級の関係
中小企業診断士と簿記2級には大部分で強い関連性があります。
企業を支援する際、財務諸表の理解は必須となります。
そこで、財務諸表を作るための資格である“簿記2級”が大いに役立つのです。
中小企業診断士として業務する上でも、取得していると強みになる資格でしょう。
財務会計と簿記2級の関係
簿記2級と財務会計は“基礎と応用”という関係といえます。少し解説しますね、
中小企業診断士試験の財務会計は会計知識全体を問われる試験です。
仕訳だけでなく、会計基準やファイナンス関連や会計実務に関することも問われる幅広い試験です。
(これが財務会計を難しくしている理由でしょう)
しかし、皆さんに知っておいてもらいたいのは、
“仕訳がすべての土台となっている”ということです。
会計分野における常識で、仕訳の積み重ねが財務諸表になったり、ファイナンス関連に反映されたりしています。
つまり、簿記2級と財務会計は“基礎と応用“という関係があると言えます。
1次試験以降の簿記2級のとの関係
2次試験や実務補修も、簿記2級の知識で有利に進めることができるでしょう。
事例Ⅳの経営分析や損益分岐点計算は、ほとんど活用できますし、
そのほかの問題も基礎が固まっているおかげで、理解のスピードや応用力が圧倒的に有利です。
実務補修では、実企業の財務諸表を読み解いていくことになるので、かならず役に立ってくれます。
簿記2級の試験内容と取得について
では、簿記2級はどのような試験内容で、取得にはどれくらいかかるか簡単に解説します
簿記2級の試験内容
簿記2級は経理担当としての知識を問われるということは説明しましたが、具体的な内容を見ていきましょう。
簿記2級で問われる知識は下の表のとおりです。財務会計と関連する順に並べてみました。
区分 | 論点 | 財務会計出題頻度 |
---|---|---|
直接原価計算 | 損益分岐点計算 | 非常に高い |
財務諸表作成 | 各仕訳/減価償却/棚卸資産/税効果/ 本支店会計/株主資本変動計算書等 | 高い |
原価計算 | 製造原価報告書/標準原価計算/ 個別原価計算/総合原価計算等 | 中 |
連結会計 | 開始仕訳・連結仕訳等 | ほとんど出ない |
このように、ほとんどの範囲が被っていることがわかりますよね。
連結会計は大企業に適用されるものなので、中小企業診断士で出る可能性は非常に低いです。
簿記2級の勉強時間
簿記2級の合格までの勉強時間は120時間程度かかることが多いです。
しかし、財務会計のためだけだと、最難関論点の連結会計は丸々スキップできるので
実質90時間ほどと言えるでしょう。
簿記2級のおすすめ勉強法
まず、簿記2級のおすすめ教材は
「このサイト」に載っている教材でしたら、どれもわかりやすく質が高いです。

私は「みんなが欲しかった簿記の教科書」を使っていました。
色付きで、どの論点もわかりやすく、網羅的に解説してあります。
左画像の4冊+過去問だけで合格は十分可能です
また、勉強法として、最もおすすめが、大量の問題を解きまくることです。
簿記は、理論的に考えるより、身体に覚えさせていく部分が多くあり、
解いた問題数=合格率と言っても過言ではないです。
この「いぬぼき」というサイトが簡単かつ網羅的な問題が載っておりおすすめです。
【簿記2級を持っている人】の中小企業診断士試験財務会計

全体として会計知識に関する基礎が固まっており有利
先ほども述べた通り、仕訳を作る基礎はできているので、
- 理解のスピードが速い
- 既に学習済みの範囲がある
- 応用問題への対応力が高くなっている
というメリットがあります。未学習の範囲もスムーズに勉強が進むでしょう。
財務会計は特に仕訳やBS/PLや工業簿記に関する知識で大きく有利
財務会計と被っている範囲は多く、下表の論点は、丸々スキップすることができます。
- 仕訳
- 固定資産/税効果/棚卸資産/本支店会計
- 決算前整理仕訳/株主資本変動計算書
- 工業簿記全般
財務会計テキストのページ基準で言うと、1/3以上をスキップできます。
簿記2級ではカバーできていない論点
簿記2級だけでは不十分な範囲もあります。簿記2級ではカバーできない論点は下表のとおりです。
- 会計基準
- ファイナンス関連(時間価値/資本コスト/MM理論等…)
- 経営分析(安全性/収益性/効率性/生産性の指標)
- 簿記1級レベルの問題(減損会計/キャッシュフロー/資産除去債務等…)
この4つの内容は、しっかりと対策する必要があるものの、
簿記2級で基礎が固まっているので、スムーズに理解できるでしょう。
【簿記未経験の人】の中小企業診断士試験財務会計に簿記2級は必要か?

簿記を飛ばして診断士の財務会計に直行はむずかしい?
簿記を飛ばして、財務会計に合格することはもちろん可能です。
ですが、得点源にならないどころか、足切りにかかるリスクが付きまとう可能性があります。
年々、財務会計は難しくなってきており、簿記で基礎固めしていない人は、点数が伸び悩む傾向にあります。
特に令和7年度は合格率8%という難しさでした。
下に、令和7年度の財務会計で苦しんだ方のコメントを紹介します。
多くの方が、足切りを食らったり、足を引っ張る科目になっていることがわかります。
財務会計のために簿記2級を取得する必要はあるの?
時間のない方には必須とまでは言えませんが、取得することは間違いなく大きな武器になると断言できます。
結論としては、“時間の余裕によるが、なるべく取得する必要がある”。ということです。
では、状況別で簿記2級を取った方がいい人、取らなくてもいい人を学習ルートに沿って解説します。
【時間に余裕がある人】におすすめの学習ルート

この章では、“時間に余裕がある人”、“1次試験までに他の資格を取る時間がある人”に向けて、
簿記2級取得を含めた学習ルートを、私の経験の分析から、紹介します。
先ずは簿記3級の取得
1番最初に簿記3級の取得を目指してください。理由は2つあります。
- 仕訳に慣れるため
- 財務諸表の作り方を知るため
簿記2級にステップアップするため、簿記3級は会計知識の基礎を学ぶことができます。
次に財務会計の学習と簿記2級を同時並行で
簿記3級が取得できたら、財務会計と簿記2級の学習を同時に始めてください。
下表のように教材を分けるのがオススメです。
→簿記2級と財務会計が被っている範囲は簿記2級の教材で勉強
→その他の範囲は財務会計の教材で勉強
このように分けるメリットは次の理由です。
・簿記2級の範囲分は、簿記2級の教材が圧倒的にわかりやすい
・資格取得で大きな自信に
つまり、簿記2級を併用することで効率的な勉強にもなります。
(連結会計はやらなくても大丈夫です。半分くらいの確率で簿記試験にも出ません。CBTで受ければ何度も受験可能なので、丸々スキップしても合格可能です。)
時間のある方、2次試験も見据えた勉強をしたい方の勉強順をつけるとすると
簿記3級>財務会計テキスト/簿記2級>事例Ⅳ>ビジネス会計検定などのその他会計資格
と言うことができるでしょう。
【時間に余裕がない人】におすすめの学習ルート

“1次試験まで時間が残っていない方”、“仕事が忙しくて余裕がない方”に向けた
私の経験から分析したオススメ学習ルートを紹介します。
ビジネス会計検定3級の学習
時間がない方はビジネス会計検定3級から勉強し始めるのが最もおすすめです。
この資格は、ビジネスマンが財務諸表を読んだり、経営分析をしたりする知識を問われる試験です。
いきなり財務会計に入るより、この試験を勉強してみてください。
ビジネス会計検定を勉強するメリットとして
- 会計全体の視点から学習を進めることができる
- 財務会計の経営分析と範囲が被っている
- 学習時間が20時間程度で取得可能
まとめると、勉強時間が少なくて済む上に、“会計とは”という部分をまんべんなく学ぶことができるということです。
簿記は仕訳単位でボトムアップのように理解していくのに対して、
ビジネス会計検定は財務諸表単位でトップダウンのように理解していくイメージです。
財務会計の学習と簿記3級→2級の学習を同時並行で進める
ビジネス会計検定3級が取得できたら、財務会計と簿記3級の学習を同時に始めてください。
下表のように教材を分けるのがオススメです。
→簿記3級と財務会計が被っている範囲は簿記3級の教材で勉強
→その他の範囲は財務会計の教材で勉強
このように分けるメリットは次の理由です
・簿記3級の範囲分は、簿記3級の教材が圧倒的にわかりやすい
・資格取得で自信に
・簿記2級より短期間で学習が可能
簿記3級を併用することで効率的な勉強にもなります。
簿記3級の学習がある程度終われば、簿記2級の範囲に着手してください。
財務会計の学習が優先となりますが、簿記2級と被っている部分は簿記2級の教材の方が圧倒的にわかりやすいです。
資格取得レベルまで仕上げなくていいので、ぜひ活用してみてください。
時間のない方の勉強順を掲載しておきます
ビジネス会計検定3級>財務会計テキスト>簿記3級>簿記2級
まとめ:中小企業診断士試験で簿記2級は、ほぼ必須級

みなさん簿記2級の必要性についてなんとなく理解できたでしょうか。
この記事でお伝えしたかった事、それは
年々難化する財務会計で、「足切りになりたくない」「得点源にしたい」という方は簿記2級は必須級であるということです。
時間に余裕がある方は簿記2級を勉強することを強くオススメします。
ぜひ、簿記2級で財務会計を攻略して、中小企業診断士1次試験を突破してください!